2017年3月18日土曜日

「『笛ゼミ』卒業研究集〜2016 (平成 28) 年度〜」作成しました!(2017/3/18)

本日は卒業式です。

今年度のセミ生の卒業研究は力作が揃ったので,
「『笛ゼミ』卒業研究集〜2016 (平成 28) 年度〜」
を作成しました。

11号館1Fロビーの「卒業研究集」置き場?に置きますが,ネットには載せませんので,ご興味のある方はぜひ現物を見に来て下さいませ。

タイトルと私のあとがきを掲載します。

京都産業大学文化学部
「笛ゼミ」卒業研究集
2016 (平成28) 年度

美濃部 勝哉
ジョン・ダンスタプルと英国の甘美な響き
〜Quam pulchra esの考察〜

高橋 小鈴
トルバドゥールとトルヴェールの歌詞から見た西欧中世の世相

呉田 愛里花
クラリネットのルーツを辿る
〜シャリュモーから古代エジプトまで〜

あとがき

 2016年度,初めて卒業研究集を作りました。美濃部くん,高橋さん,呉田さんの3名は,ヨーロッパ基礎演習(旧カリキュラム)でバロック音楽の歴史を9名で学び,その後のヨーロッパ文化演習(旧カリキュラム)IIIでは3名になって中世・ルネサンス音楽の歴史を学びつづけましたが,大変真摯に学び,卒業研究のテーマを決めてからは就職活動の中でもきちんとリサーチを行ってほぼ毎週進捗状況を報告してくれました。その成果をぜひ広く見ていただきたいと思い,今回こうして卒業研究集をまとめました。
 美濃部くんは,合唱団のテノールとしてルネサンスの曲などを歌っていることもあって,音楽文化論という授業で扱った中世末期の大陸にはまだなく「英国の甘美な響き」と言われた3度と6度の和音に興味を持ち,中でも英仏百年戦争(13371453)でジャンヌ・ダルクと戦ったかもしれないダンスタプル作の3声曲Quam pulchra es「あなたは何と美しい」の和音を11つ分析して,「英国の甘美な響き」がいかに効果的に使われていることを考察しました。高橋さんは,中世フランス地域の宮廷や社会に興味を持ち,その宮廷の中で活躍した「吟遊詩人」とも言われる数多くの南仏のトルバドゥール,その後の北仏のトルヴェールの中から数名ずつ取り上げて,詩の主題が一般的に言われている叶うことのない「遠い恋」だけではなくて,十字軍(10961291?)やそれに絡む当時の世相を辛辣に謳った詩も分析して紹介しました。呉田さんは,高校時代吹奏楽部でクラリネットを吹いていたことからその歴史を扱い,現代のクラリネットはリコーダーのような作りのシャリュモーまでしか辿れませんが,それ以外に現代のアラブ地域ではクラリネットのようなシングル・リード楽器に様々な種類があり特に双管の楽器が使われていること,さらにそれは古代エジプトまで遡る非常に古い楽器であること,またアラブからヨーロッパにどのように入ったかについて仮説を立てました。バラエティに富んだ力作揃いです。
 「笛ゼミ」というのは,竹内がヨーロッパ基礎演習の担当することになった2011年に,その中でゼミ生が付けた名前です。その時のゼミ生はたった1名で,その後のヨーロッパ文化演習IIIもずっと1名でした。クラシック・ギターを弾く学生だったので,ゼミでは音楽の歴史を勉強しつつ,コンクールに出るための演奏のレッスンと,音楽文化論の授業やオープンキャンパスなどで演奏実践も行いました。また,「学内で演奏会をしたい」という希望から年末に「笛ゼミ演奏会」を行うことになり,今に続いています。
 現在はコースが変わって歴史文化基礎演習,歴史文化演習IIIとなり,内容も歴史的,文化的側面をより重視して学んでいます。ゼミ学生の中には音楽活動に関わっていない学生もいますので,現在の卒業研究も音楽そのもの以外の周辺的なことまで拡げて,それぞれの関心に応じて進めています。世間で音楽の「常識」とされ,特にマスコミで取り上げられていることの中には,古い音楽の歴史から見ると間違っていることが数多くあります,ゼミや音楽文化論では,それらに気付いてもらいながら,音楽とそれにまつわる様々なことについて,単にまとめるだけでなく常に何らかの問題意識のある卒業研究が作り上げられるように,今後もより良き指導ができればと願っています。