2020年8月13日木曜日

3/1拍子や3/2拍子、Cや¢記号のこと:17世紀の拍子の表し方

とある17世紀の歌曲の通奏低音を練習していて、現代譜では2分の3とあって何だかのったりしている…?と思って弾いていたけど、ファクシミリを見ると1分の3と書いてある!

それで弾くと、自分のテオルボの技術不足で跳躍とか速く動けないけど、喜ばしい歌詞が付いている音楽としては合ってると思うから、何とか弾けるようにしたい。

…と顔本に書いたら、1月に演奏に伺ったところの方から

「 1分の3?って?」

という質問があったのでまとめてみました。

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現代的に音符基準に考えるとそうなりますよね。

17世紀以前は大きな拍をどう分割するかを分数で書いていまして、1月に演奏した曲の中にも3拍子はそのように書かれています。

基本がタクトゥスと呼ばれる手の上下一往復で60です。

3拍子にする時とかはそれを比率で表します。

2分の3なら、2(一往復)の中に3つ入れてねということで、二拍三連みたいになります。

音符の長さの考え方も今とは違うので、「全音符」だからと言って長くないことにご注意くださいませ。

1分の3なら、1(片道)の中に3つ入れてということで、三連符みたいに速くなります。

Cは2つの中に2つ入れてということで(本当は大きな音符を2分割してさらに2分割して結局4分割したことを表します)、元々アルファベットではなくて半円です。

これを1つの中に2つ入れてとなると1分の2になるんですけど、これは¢とも表すことができます。

こうなると基準の単位が変わって、17世紀で基本単位になったセミブレヴィス(全音符)がブレヴィス(倍全音符)基準になるので、alla breveと呼ばれます。

細かいところは省略していますが、こんな感じだと思います。

たぶん独習はちょっと大変かもしれません。

でも今は本だけではなくてオンライン講習会もあります。

1月に伺ったメンバーは「16〜17世紀の宗教合唱曲を歌う会」所属ですけど、その練習会で実践的に教えて頂いて演奏したことが基本になっています。

でもさらに理論的にも裏付けを取りたいと思って、「17世紀の演奏習慣に関する英書読書会」を立ち上げて、今このあたりの章を10人位で読んでいるのですが、コロナの影響で研究会ができないままになっています。

分数がわかりやすいのは確かで、フレスコバルディには 8分の12 にした後でもとに戻すのに 12分の8 と書いてあったりします。

2020年7月20日月曜日

詩篇42篇1節の邦訳「谷川」やラテン語fontesは誤訳?

「ワイルドライフ」でイスラエルのネゲヴ沙漠をやっていたので思い出したことがあります。

対抗宗教改革期の清冽な合唱曲をたくさん書いたPalestrinaの曲の中でもよく歌われる、詩篇42篇(ラテン語聖書では41篇)をテキスト(ただしウルガタではない)にした美しいSicut cervus desiderat ad fontes aquarumの「fontes」や邦訳聖書の「谷川」は、ヘブライ語からすると誤訳です。

ラテン語ウルガタの全文です。
 In finem. Intellectus filiis Core. Quemadmodum desiderat cervus ad fontes aquarum, ita desiderat anima mea ad te, Deus.

邦訳では相当違いがあります。
「鹿が涸れ谷で水をあえぎ求めるように/神よ、私の魂はあなたをあえぎ求める。」(共同訳2018。新共同訳も「涸れた谷」)
「鹿が谷川の流れを慕いあえぐように 神よ 私のたましいはあなたを慕いあえぎます。」(新改訳2017、第3版以前も。そして口語〔協会〕訳も)

英訳をBibleHubのParallelで見ると、大抵はstreamsと訳されています。
Douay-Rheims Bibleのthe fountains of waterは、カトリックであるがゆえにラテン語訳に引っ張られている気がします。
(126篇の方は結構違ってstreamsが多いですが、Good News Translationのdry riverbedsはかなりの意訳とはいえヘブライ語のニュアンスに近いです)。

ヘブライ語では次の通り。

לַמְנַצֵּחַ מַשְׂכִּיל לִבְנֵי קֹרַח.לַמְנַצֵּחַ 
כְּאַיָּל תַּעֲרֹג עַל אֲפִיקֵי מָיִם כֵּן נַפְשִׁי תַעֲרֹג אֵלֶיךָ אֱלֹהִים. 

問題の語はאֲפִיקֵיで、これは番組でもやっていたように、雨が降った時だけ水の流れになるワディの、しかも川床をも指す言葉です。

詩篇126篇について論文を書いた時に調べていて、詩篇42篇にも出てくる語で、Palestrinaの曲などを歌う時にはfontesなので、きっと水がとうとうと流れる谷川がイメージされているんだろうけど、ヘブライ語聖書ではそうではありません。

この語は普通の川を表すものではありませんし、ワディとか涸れ川とか涸れ谷およびその川床を表し、126篇では雨季になって突然土石流みたい流れて、その後に突然花が咲き誇る様子で、そのように捕囚民が帰ってくるということのようです。
(竹内茂夫「詩篇126篇注解と私訳:新改訳2017も参考に」『宣教と神学』(神戸ルーテル神学校) 39:71-80。)

ネゲヴはこんな感じで、fontesも谷川もなく、ワディの川床が見えるだけです。
ですので、ヘブライ語では、水がない流れやその川床の上で、水を熱望してあえいでいる鹿のように、という感じです。
水がその場にあれば慕うことはありません(それよりも今遠くにいるというイメージなら別ですが)。

ラテン語のfontesがどこから来たんだろう?と思ってちょっと調べてみますと、ギリシア語七十人訳(LXX)がπηγὰς "a fountain, spring"と訳してしまったので、そちらに基づいているようです。
Εἰς τὸ τέλος· εἰς σύνεσιν τοῖς υἱοῖς Κόρε. Ὃν τρόπον ἐπιποθεῖ ἡ ἔλαφος ἐπὶ τὰς πηγὰς τῶν ὑδάτων, οὕτως ἐπιποθεῖ ἡ ψυχή μου πρὸς σέ, ὁ θεός.
もっとも、七十人訳の底本が、マソラ本文のヘブライ語本文の底本と同じかどうかの問題がありますので(多分違う)、「誤訳」と言い切るのは実は危険かもしれませんが。

2020年5月8日金曜日

オンライン授業のための説明動画を6つ作ってみて

京都産業大学ではオンライン授業は来週からなので、そろそろ自分の準備をはじめました。

これまではカリキュラム委員会下の遠隔授業検討小委員会に所属して、準備のための準備として、Teamsで山のようなチャットをして、2回の長いTeams会議をして、ガイドラインを数種類まとめて、4回の講習会を開催しました(私も2コマ担当しました)。

そして今日、1つの講義のための動画約10分☓6つを作ってみて感じたあれこれを。

・作る場所を学生に見られたくなかったので、Teamsでは秘密の作業用チームを作りました。でも学生が見ることができるチームでも、「チャネル」の属性で所有者だけアクセスとすれば、チームは学生公開でも学生は見えないのかもしれません。

・最初Zoomで作っていましたが、結局Streamに載せないといけないのが面倒になってTeamsで。画面共有は結局Teamsの方が楽でした。

・1本10分の動画を撮って色々悩んでしまったので、1分くらいの動画で色々お試し録画しました。

・最初ZoomだったのはPCの音を再生しながら録画というのができたからです。それはTeamsではできませんが、対面授業と同じくリンク張って各自でアクセスしてもらうことに。

・Streamではアクセス許可に注意したのと、トリミングでいらないところはバッサリ。特に最初はポンと始まるように。

・チームのチャネルの動きを知るために、チームを
 管理 > 設定 > メンバーのアクセス許可 
を色々いじっていると、最後の2つでメンバーがメッセージを削除または編集のオプションというのは所有者にも適用される!というのがわかって、学生だけでなく、所有者の自分が載せた投稿なども編集や削除ができなくなるというのを発見。逆に、学生が書き込んて消したいと思っているものでも残せるらしい。

・moodleが落ちたときのことを考えてTeamsでも同じような1回目のセットを作りました。
両方とも落ちたら…どうにもなりません。

そんな現状です。
もう1つの講義の動画もいくつか作らねば。

2020年2月15日土曜日

やさしく読める聖書語学短期講座 ヘブル語編(2020/3/13,神戸ルーテル神学校)

やさしく読める聖書語学短期講座 
ヘブル語編


神戸ルーテル神学校では、初級聖書語学短期講座を下記のとおり開講いたします。
まったく初めての者の方、へブル、ギリシア語をもう一度学びたい教職、信徒の方、大歓迎です。
ヘブル語講読の方は通信講座のスクーリングも兼ねています。
どうぞお越しください、お待ちしています。

午前にはまったく初めての方対象のヘブル文字の読み方の学習を、
午後には楽器や音楽用語がたくさん出てくる詩篇の最後の第150篇を、翻訳聖書を見ているだけでは決してわからず、ギリシア語七十人訳やとりわけ宗教曲のテキストになっているラテン語ウルガタ(あるいはローマの詩篇)がまったく違う訳をしていることなど、ヘブル語聖書を読んでみて初めてわかること、あるいはまだまだわかっていなくてもとりあえず日本語に訳していることなどをできる限り、ヘブル語がまったく初めての方でもわかるように解き明かします。


日時 2020年3月13日(金)11:00〜16:45
   (前日12日(木)はギリシア語です)

場所 神戸ルーテル神学校 
   〒651-0052 神戸市中央区中島通2-3-5
   TEL(078)221-6956 FAX(078)221-5825
   office@koluthse.jp  http://www.koluthse.jp

内容 
はじめてのヘブル語 ~アルファベット~
ヘブル語講読「聖所のオーケストラ?」~詩篇150篇をヘブル語で〜」

費用 一日6,000円(一コマ2,000円)
   
プログラム
3/13(金)
11:00-12:30 はじめてのヘブル語
13:30-15:00 ヘブル語講読①
15:15-16:45 ヘブル語講読②

2019年6月18日火曜日

音楽文化論特別講義~ルイ14世時代の宗教曲と器楽曲(2019/7/7,京都産業大学神山ホール)

音楽文化論特別講義2019
エレミヤの哀歌
マリアの賛歌 
Musique Douce 2019


17~8世紀のバロック期フランスの「フランス古典」と呼ばれる雅びな分野の中から,ルイ14世の宮廷で活躍したド・ラランドやクープランの宗教曲他,マレとデュパールの器楽曲を,美しい響きの神山ホールでお楽しみ下さい。

 日時 2019年7月7日(日) 開演15:00(開場14:30 終演予定17:00)
 会場 京都産業大学 神山ホール大ホール
入場料 無料(予約・申込不要)

曲目(予定)
M.=R.ド・ラランド 《暗闇の朗誦》(《ルソン・ド・テネブル》,エレミヤの哀歌)
F.クープラン 〈マニフィカート〉(マリアの賛歌)
M.マレ ヴィオール曲集第5巻より
C.デュパール 組曲第1番 他

【ミュズィク・ドゥス】
笹山 晶子 辛川 千奈美(ソプラノ) 
竹内 茂夫(テオルボ,リコーダー) 
太田 賀之(ヴィオール) 
小林 美紀(クラヴサン)

主催 竹内 茂夫(京都産業大学文化学部)atake@cc.kyoto-su.ac.jp
協力 京都産業大学文化学部「笛ゼミ」の皆さん

やさしく読める聖書語学短期講座 ヘブル語編(2019/7/12,神戸ルーテル神学校)

やさしく読める聖書語学短期講座 
ヘブル語編


神戸ルーテル神学校では、初級聖書語学短期講座を下記のとおり開講いたします。
まったく初めての者の方、へブル、ギリシア語をもう一度学びたい教職、信徒の方、大歓迎です。
ヘブル語講読の方は通信講座のスクーリングも兼ねています。
どうぞお越しください、お待ちしています。

日時 2019年7月12日(金)11:00〜16:45
   (前日11日(木)はギリシア語です)

場所 神戸ルーテル神学校 
   〒651-0052 神戸市中央区中島通2-3-5
   TEL(078)221-6956 FAX(078)221-5825
   office@koluthse.jp  http://www.koluthse.jp

内容 
はじめてのヘブル語 ~アルファベット~
ヘブル語講読「名詞の連語形と独立形」の復習~創世記3章を読んでみましょう」

費用 一日6,000円(一コマ2,000円)
   
プログラム
3/15(金)
11:00-12:30 はじめてのヘブル語
13:30-15:00 ヘブル語講読①


15:15-16:45 ヘブル語講読②

音楽文化論A 2019 演奏曲

特記以外は
ヤコプ・ファン・エイク Jacob van Eyck (1590頃-1657):
 《笛の楽園 第1巻 Der Fluyten Lust-hof Eerste Deel》(2nd ed. 1649) より

♪〈ヤギの足 Bockxvoetje〉

♪〈緑の菩提樹の下で Onder de Linde groene〉

♪〈夜啼鴬 Den Nachtegael[tje]〉

♪〈我が恋人シレ l'Amie Cillae〉

♪〈ラヴィニョン Lavignone〉

♪作者不詳 Anonymous:〈エスタンピー〈トリスタンの嘆き〜ラ・ロッタ Lamento di Tristan - La rotta〉(14世紀)

♪クロード・ジェルヴェーズ Claude Gervaise (1540-60年活躍):《4声と5声のダンスリー 第3巻 Troisieme livre de danceries a quatre et cinq parties》(1556) より アルマンド第2番 Allemande II
〜作者不詳 Anonymous:〈ナポリのバグパイプ吹きのキャロル Neapolitan Bagpiper's Carol〉

♪〈バタリ Batali〉